最近のスーツケースのほとんどに採用されている「TSAロック」。自分の鍵で開ける鍵穴の他に、もう一つ、見慣れない鍵穴が付いていることに気づいた方も多いでしょう。この鍵穴こそが、TSAロックの最大の特徴であり、その仕組みを正しく理解しておくことは、特に海外旅行をする上で非常に重要です。TSAとは、「Transportation Security Administration(米国運輸保安局)」の略称です。2001年のアメリカ同時多発テロ以降、アメリカの空港(ハワイ、グアム、サイパンなどを含む)では、預け入れ手荷物の中身をTSAの職員が目視で検査することが義務付けられました。そのため、もし施錠されたスーツケースが検査対象となった場合、職員は鍵を破壊して中身を確認することが許可されているのです。これでは、せっかくのスーツケースが壊されてしまうことになりかねません。この問題を解決するために開発されたのが、TSAロックです。TSAロックは、持ち主自身が自分の鍵やダイヤル番号で施錠・解錠できるのはもちろんのこと、TSAの職員だけが持つことができる特殊な「マスターキー」で、ロックを破壊することなく解錠できる仕組みになっています。つまり、あの謎の鍵穴は、私たち旅行者が使うためのものではなく、空港の保安職員専用の「合鍵穴」なのです。もし、自分のスーツケースが検査を受けた場合、中には「TSAによって検査されました」という内容の通知書が入れられています。これにより、私たちは自分の荷物が正規の手続きで検査されたことを知ることができます。このTSAロックのおかげで、私たちは安心してスーツケースに鍵をかけ、アメリカ方面への旅行に出かけることができるのです。ただし、注意点として、TSAロックが採用されていない古いタイプのスーツケースに、後付けの南京錠などで鍵をかけた場合は、容赦なく破壊される可能性があることを覚えておく必要があります。