専門業者を呼ぶほどではないけれど、どうしても今すぐスーツケースを開けたい。そんな時に試せる、いくつかの自力での鍵開けの裏ワザが存在します。ただし、これらの方法は、スーツケースを傷つけたり、ロック機構を破損させたりするリスクも伴うため、あくまで「自己責任」で、慎重に行うことが大前提です。ダイヤルロックの番号を忘れてしまった場合に、最も確実で地道な方法が、「000」から「999」まで、全ての番号の組み合わせを一つずつ試す「総当たり」です。三桁のダイヤルであれば、組み合わせは千通り。一通り試すのに数秒かかるとすると、理論上は三十分もあれば開く計算になります。時間と根気は必要ですが、スーツケースを傷つけることなく開けられる、最も安全な方法と言えるでしょう。次に、少し技術を要する方法として、ボールペンを使ったファスナーの破壊開錠があります。これは、ファスナーのエレメント(歯)の間に、ボールペンの先端のような硬くて細いものを突き刺し、こじ開けるというものです。一度こじ開けてしまえば、あとは指でスルスルとファスナーを開けていくことができます。中身を取り出した後、ロックされたままの引き手を両方向に動かすと、ファスナーが再び閉まることもありますが、一度破壊した部分は強度が落ちているため、防犯性は失われます。あくまで、中身を取り出すための緊急手段と考えるべきです。シリンダーキーを紛失した場合は、ピッキングに挑戦するという手もあります。ヘアピンや安全ピンを二本使い、一本で鍵穴内部のシリンダーにテンション(回転方向の力)をかけながら、もう一本で内部のピンを一つずつ押し上げていくというものです。しかし、これは非常に繊細な感覚と技術を要するため、素人が成功する確率は極めて低いと言わざるを得ません。下手にいじると鍵穴を壊してしまうリスクの方が高いでしょう。これらの裏ワザは、あくまで最後の手段。まずは正規の方法で開けられないか、十分に試した上で、慎重に判断することが大切です。