「スマートキーは、キーが車内にあればロックされないから、インロック(キー閉じ込み)の心配はない」。多くのドライバーがそう信じていますが、残念ながらそれは「神話」です。特定の条件下では、スマートキー搭載車でも、インロックは現実に起こり得ます。その仕組みと原因を知っておくことは、思わぬトラブルを未然に防ぐために非常に重要です。スマートキー搭載車でインロックが起こる最も一般的な原因は、キーの「電池残量の低下」です。スマートキーシステムは、キーと車両が正常に電波をやり取りすることで成り立っています。キーの電池が消耗して電波が弱くなると、車両側が車内にあるキーの存在を正確に検知できなくなることがあります。その結果、システムが「キーは車外にある」と誤認し、ドアハンドルのリクエストスイッチを押した際や、オートロック機能が作動した際に、施錠を許可してしまうのです。次に多いのが、「電波干渉」です。スマートフォンやノートパソコン、他の電子キーなど、強い電磁波を発する機器とスマートキーを一緒に置いていると、互いの電波が干渉し合い、車両がキーの信号を正しく認識できなくなることがあります。また、テレビ塔や高圧送電線の近くなど、強力な電波が発生している特殊な環境下でも、同様の現象が起こる可能性があります。さらに、キーを置く「場所」もインロックのリスクを左右します。ダッシュボードの上や、フロアマットの下、あるいは金属製の小物入れの中など、車種によって定められた車内アンテナが電波を検知しにくい「死角」が存在します。そうした場所にキーを置いたまま、同行者が車外からドアをロックしてしまう、というケースも少なくありません。スマートキーは非常に賢いシステムですが、その知性は完璧ではありません。その便利さに油断しきってしまうのではなく、車を離れる際は、どんなに短い時間であっても、必ずキーを身につけるという、アナログで基本的な習慣を徹底すること。それが、インロックというデジタル時代の落とし穴を避けるための、最も確実な方法なのです。