三桁あるいは四桁のダイヤルロック。自分で好きな番号に設定できる手軽さから、多くのスーツケースで採用されていますが、その最大の弱点は「番号を忘れてしまう」という、極めて人間的なミスにあります。思い出せる限りの番号を試しても開かない。そんな絶望的な状況に陥った時、いくつかの最終手段が存在します。まず、最も確実でスーツケースを傷つけない方法が、「000」から「999」まで、全ての組み合わせを試す「総当たり攻撃」です。一見、途方もない作業に思えますが、三桁のダイヤルなら組み合わせは千通りしかありません。集中して行えば、一通り試すのに二、三秒とかからないため、最大でも三十分程度で必ず開きます。テレビでも見ながら、無心でダイヤルを回し続ける根気さえあれば、これが最も賢明な解決策です。しかし、そこまで待てない、という場合に試せるのが、ダイヤルの「感触」や「隙間」から番号を探り当てる、少しテクニカルな方法です。多くのダイヤルロックは、正しい番号に揃うと、内部の機構がわずかに動くことで、解錠ボタンを引いた時の手応えが微妙に変わったり、ダイヤルの下にほんの小さな隙間が見えたりすることがあります。解錠ボタンに少し力を加えながら、ダイヤルを一つずつゆっくりと回し、感触が「カチッ」と変わる場所や、隙間が見える場所を探します。この作業を全ての桁で行うことで、正しい番号を特定できる場合があります。ただし、この方法は全てのロックで通用するわけではなく、ある程度のコツと集中力を要します。そして、本当に最後の、物理的な手段が「破壊」です。ニッパーやワイヤーカッターを使って、ロック部分の金具(シャックル)を切断するという方法です。もちろん、そのロックは二度と使えなくなりますが、中身を最優先で取り出したい緊急時には、やむを得ない選択となるでしょう。ただし、この場合も、スーツケース本体を傷つけないように、細心の注意を払う必要があります。
ダイヤル番号を忘れた時の最終手段