「この鍵は、このカードがないと合鍵は作れません」。防犯性の高い鍵に交換した際、鍵と一緒に小さなカードを手渡され、そう説明を受けたことはありませんか。このカードは「セキュリティカード」や「IDカード」と呼ばれ、これこそが「作れないタイプ」の鍵の中でも、最高レベルのセキュリティを担保する重要な仕組み「メーカー登録制」の心臓部です。メーカー登録制とは、物理的に鍵を複製する技術的な難しさに加え、「制度」として第三者による安易な複製を不可能にするシステムです。鍵の所有者は、購入時に自分の氏名や連絡先などをメーカーに登録します。そして、その所有者であることの証明として、固有のID番号が記載されたセキュリティカードが発行されるのです。この制度の下では、たとえ腕の良い鍵師が、どんなに高性能なキーマシンを使ったとしても、元鍵から合鍵をコピーすることは許されません。スペアキーが必要になった場合、所有者はこのセキュリティカードを提示して、専門の鍵屋やメーカーの代理店を通じて、メーカーに「純正キー」の発注を依頼します。メーカー側では、提示されたID番号と登録されている所有者情報が一致することを確認して初めて、工場の製造ラインで、設計データに基づいた新品の鍵(純正キー)を製造し、提供するのです。この仕組みにより、もしあなたが鍵を一時的に誰かに貸したとしても、あるいはどこかで紛失して誰かに拾われたとしても、セキュリティカードを持たない第三者が勝手に合鍵を作ることは絶対にできません。つまり、あなたの知らないところで合鍵が出回るリスクを、完全にゼロにすることができるのです。しかし、これは裏を返せば、セキュリティカードそのものを紛失してしまうと、たとえあなたが正当な所有者であっても、メーカーへの発注ができず、合鍵を手に入れることが極めて困難になることを意味します。この小さなカードは、あなたの鍵の「身分証明書」です。絶対に紛失しないよう、鍵本体とは別の場所に、大切に保管しておく必要があります。